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2019年 IT企業の新入社員向け配属後アンケート
2020.03.23
昨年に引き続き、アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受講したIT企業の新入社員を対象にアンケートを実施いたしました。エンジニア向けのテクニカルスキルやビジネススキルなどの新人研修を受講し、現場へ配属された新入社員の皆様に、入社しておよそ半年後の状況をご回答いただきました。
もっとも役立っていると回答があったのは「システム開発演習(チーム)」です。これは研修の集大成として、それまでに学んだ研修内容を活かして、架空企業の情報システムをチームメンバーと協力して開発する模擬プロジェクトの実習です。計画から納品まで一連のシステム開発の流れを体験するなかで、開発のおもしろみや大変さ、納品したときの喜びを感じた実習が現場でも役立っているようです。「講師(マネージャー役)への進捗報告の経験が現場でも活かされている」「品質保証の方法は、学生の時に考えたことがなかったので今でも役立っています」「チームで、ものづくりする楽しみを知った」などのコメントがありました。
次に役立っていると回答があったのは「データベース(SQL)」でした。昨年は3位だったので順位をひとつ上げました。「プログラミング」(3位)も昨年以上に割合が高まっていることから想定すると、新入社員にIT初学者が増えている背景があるのかもしれません。学生時代にSQLやJavaをすでにマスターしていれば、ここには票が入らないはずです。IT初学者の割合が増えているのは、採用担当者や育成担当者からよく聞く話です。この傾向はしばらく続くと思われるので、新人研修ではプログラミング系はしっかりと基礎をおさえたカリキュラムが今後も求められそうです。
他にはエンジニア向けのテクニカルなテーマが選択肢として多く並んでいるなか、「ビジネスマナー」が続いています。マナーについては、単に研修を受けただけでは習慣化されません。そのため私どもが研修を担当している期間中はテクニカルなテーマの間でも、講師やコーディネーターが新人のマナー面で気になる点があれば、その場で指導するようにしています。このような継続的なフォローが役立っているという結果に表れているのかもしれません。
なお、アイティ・アシストが施策として取り組んでいる「自主運営」(お客様によっては研修運営プロジェクトと呼ぶ)に2割近くの手があがりました。この施策は新入社員に研修運営を任せるなかで、講師やコーディネーターのフィードバックを通して、マナーや仕事の進め方を身に付けていただく施策です。すべてのお客様で実施している施策ではないのですが、これだけの方が現場で役立っていると感じてくれているのは狙い通りで喜んでいます。
昨年2位だった「文章力」が今年はトップになりました。昨年トップだった「ITの知識」を本年は項目を詳細化して「インフラ」「ネットワーク」「セキュリティ」「データベース」「システム開発プロセス」の5つに分けたために票が割れた影響ではありますが、やはり現場で文章を書くことに苦労しているのが結果として表れています。小さい頃からSNSを使った(スタンプだけで成り立つ)コミュニケーションが中心で育った新入社員にとって、メールや報告書など文章力が求められる現場は大変なのでしょう。そのような背景からか、配属後も私どものビジネス文書(議事録や報告メールなど)の添削サービスを利用されるお客様が増えているのもうなずけます。
次に足りていないと回答があったのは、昨年3位だった「プログラミング力」でした。これもIT初学者の割合が増加している影響でしょうか。約3カ月間の研修期間では現場レベルまでプログラミング力を引き上げるのが難しくなっており、研修期間の延長や継続フォローが必要になってきているのかもしれません。
昨年比で変化のあった項目としては「主体性」「積極性」「チャレンジ精神」です。昨年から4~8%ほど上昇しています。最近の若者は、“失敗を恐れてみずから行動しない”“効率良く行動したがる”といった傾向がよく挙げられますが、この結果にも表れているのかもしれません。私どもが“失敗を恐れず、積極的にチャレンジしよう”と言っても、新入社員が行動を変えるのは難しい時代になってきていると感じています。
単に「なって欲しい姿」を伝えるだけでなく、みずから積極的にチャレンジすることで得られるメリットや、逆にしないことで起きるデメリットをしっかりと伝えて、新入社員の納得感を高めることが大切になってきているのではないでしょうか。
「このような研修があったら、配属後に役立つ(自由入力式)」という質問に対して、やはり多かったのは、「Office操作スキル」を望む声で、2年連続1位でした。私どものお客様がIT企業で、設計書や仕様書をExcelで作成しているというのも、その声の背景にあるのかもしれません。とにかく現場でOffice操作に苦労している新入社員が多いことは、ここにも表れています。
アイティ・アシストでは、一部のお客様で入社前教育としてOffice操作スキルの紹介とExcelのインターバル課題を出して、基本機能をマスターしてもらうようにしています。あわせて、ショートカットキーの一覧を配り、日頃から利用するように習慣化することを勧めています。そのようなお客様では、Office操作スキルを望む声は少ない傾向が出ています。
次に目立ったのは、「テストケース」です。新入社員が現場配属後に担当することの多いテストについて、テストケースを作成する研修を実施、もしくは増やして欲しいという声がありました。これもIT企業ならではのアンケート結果です。
昨年から増えていて興味深いのは「上司や先輩とのコミュニケーション」の研修を望む声です。「雑談の仕方」「まわりの人との接し方」「飲み会でのマナー」などを含めると、新入社員が世代の違う人達とのコミュニケーションに困っていることがよく分かります。
その他、目についたものとしては「開発ツール」「インフラ系」「AWS、Azure」「RPA」などの技術系です。時代があらわれているのは「電話(ガラケー、固定)の使い方」「Googleの検索力」。個人的に一番おもしろかったのは「カタカナやIT用語を多く使って会話する研修」でした。“サブスク(サブスクリプション)でいくスキームは、クライアントのアグリーをコミットしてからだ!?”笑
昨年同様、90%以上の新入社員が、OJT担当者との関係は良好と感じている結果となりました。なぜ、そのように感じているのか理由を聞いたところ、
など、OJT担当者としっかりコミュニケーションが取れていると新入社員は良い関係だと感じるようです。一方で「少し問題あり」以下を選択している新入社員や、「良好」を選択しながらもネガティブな理由には、
が挙げられていました。
前述の通り、新入社員には「上司や先輩とのコミュニケーション」に困っている方が増えています。今回は取り上げませんが、私どもが担当するOJT担当者向けの研修では、受講前にアンケートを実施していて、同じように新入社員との関係性や困っていることなどをOJT担当者へ聞いて、研修内で取り上げて講師がアドバイスするようにしています。取り上げるお困りごとのほとんどは、新入社員との関係性やコミュニケーションについてです。つまり、お互いに困っている方が増えているということです。
アイティ・アシストでは、OJT担当者と新入社員が一緒に受講するペア研修を実施しています。研修を使って両者の関係性を構築し、その後のOJTを効果的なものにしていくことが目的で、毎年実施するお客様が増えてきています。普段はなかなか話せないテーマでディスカッションしてもらったり、お互いにワークをしたり、OJT計画書をブラッシュアップしたりする研修なのですが、アンケートには両者から多数の感謝のコメントをいただきます。 「こんな機会がないと話せないので、とても良かった。今後も続けて欲しい」「質問の仕方やOJTの目標などOJT指導について先輩と合意して進められるのが嬉しい」「先輩が新人指導に悩んでいるなんて思ってもいなかったので驚いた。関係が深まってうまく進められそう」など
42.1%の新入社員が、採用時にイメージしていた仕事より、実際に働いてみて良かったと感じています。この割合は昨年より10%以上伸びています。
などがその理由です。
一方で、イメージより悪かったと回答しているのは10.8%でした。こちらは5%近く下がっています。
などを挙げています。
今回で2回目となった新入社員の配属後アンケートでは、昨年と比較して伸びたこと、下がったことなど、その差分でも新たな気付きがありました。新入社員の配属後アンケートの結果は、他でも発表されていますが、対象者がIT企業および一般企業のIT部門に限られているのは、アイティ・アシストのこのアンケートだけでしょう。エンジニアやIT企業で働く人材の育成の参考になれば幸いです。今回ご協力いただきました新入社員の皆様、育成のご担当者様には、心より御礼申し上げます。
私どもとしては、今回のアンケート結果をもとに2020年度へ向けた研修カリキュラムおよびコンテンツのブラッシュアップを図っています。今後もアンケートは継続していくつもりで、お客様の経年変化や、研修や採用が及ぼす効果を分析できるデータになると思っています。その分析結果をもとに、新たな仮説を立て、その後の研修や採用、人材育成方法に反映させていく所存です。