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2024年IT企業の新入社員向け配属後調査
2025.01.24
アイティ・アシストでは、私どもの新人研修を受講したIT企業の新入社員を対象にアンケートを実施しました。調査では、配属後に役立った研修内容や、自分に不足していると感じるスキル、採用時の仕事イメージとのギャップなどについて伺いました。
2024年度の新人研修は、対面形式の研修が増加する一方で、オンラインやハイブリッド形式も取り入れ、多様な形で実施しました。研修終了後、配属から約3ヶ月が経過したタイミングで、新入社員の皆様に現状についてご意見をいただきました。
IT企業に特化した調査としては、他にはない唯一無二の結果になっています。この特別なデータが新たな気づきや企画の参考になることを願っています。ぜひお楽しみください。
≪調査概要≫
Q.配属後に役立った研修を教えてください。(複数選択式)
5年連続で”ビジネスマナー“がもっとも役立っている
新入社員研修では、「ビジネスマナー」が5年連続で最も役立った研修として評価されました。回答率は58.6%で、新入社員の半数以上が「役立った」と答えています。以前は「開発プロジェクト演習」が1位でしたが、新型コロナの影響が出てからは「ビジネスマナー」が毎年トップとなっています。
就職活動がオンライン中心だった影響で、会社訪問などでマナーを学ぶ機会が少なく、研修を通じて初めてビジネスマナーを学ぶケースが増えているようです。配属後に出社機会の多い新入社員が、研修で学んだことを現場で活かしていることが伺えます。
次点では「プログラミング」と「データベース(SQL)」の研修が挙げられます。特に「プログラミング」は前回より6%以上増加し、現場での需要を反映していると考えられます。
「開発プロジェクト演習」は実施企業が限定される中でも4位にランクインし、チームでの開発経験が実務で役立っていることが評価されています。また、アイティ・アシスト独自施策である「研修運営プロジェクト」も24.3%の高評価を得ており、新入社員が主体的に関わることで、仕事の進め方や成長につながるとして注目されています。
Q.配属後、自分に足りていないと感じるものは何ですか?(複数選択式)
6年連続で“文章力”が足りていない
新入社員が配属後に自身の不足を感じるスキルとして、「文章力」が6年連続でトップに挙げられています。現場でメール、議事録、設計書などの文章作成に苦労している様子が伺えます。SNSを中心とした簡易なコミュニケーションに慣れた世代にとって、IT現場で求められる明確で正確な文章力は大きな課題となっているようです。
さらに、テレワークの普及によって遠隔でのコミュニケーションの重要性が増し、わかりやすく簡潔な文章を書くスキルの需要が高まっています。また、チャットツールの導入が進むなか、ツールに適した文章力を求められる場面も増えています。
こうした状況を受け、多くの企業で私どもの「ビジネス文書添削サービス」を利用し、新入社員の実践的な文章力向上を図っています。ITの現場でよくあるシーン(IT用語が飛び交う会議の議事録、システムトラブル報告など)での文章を書いてもらい、それを一つひとつ講師が添削やアドバイスコメントを入れて、個人ごとに返却するサービスです。
続いて不足していると挙がったのは「質問の仕方」で、36.7%と2番目に多い回答となりました。新入社員の3人に1人が、テレワーク環境も含めた現場での効果的な質問方法に課題を感じています。
3番目に挙がったのは「プログラミング/ロジック構築」です。このスキルは“役立った”研修で2番目に評価されているものの、現場ではより高度な実装が求められていることが理由の一つかもしれません。また、IT初学者の割合が増えている背景もあり、この項目が上位に入った可能性があります。
新入社員が配属後に役立つと考える研修内容についてフリーコメントで意見を集めたところ、「生成AI」「リーダブルコード」「JavaScript」などの技術系が挙がるなか、最も多かったのは「Excel」でした。「Excel」の研修を、内定期間中を含めて研修内に取り入れる企業も増えていますが、その多くが半日程度に留まっています。
「Excel」はPC操作スキルとあわせて生産性に直結するスキルであり、特にスマートフォン世代の新入社員には、業務で必要な機能を習得するために研修にもう少し時間を割いた方がよいのかもしれません。
また、今回注目したのは「タスク管理」のニーズです。これまでは少数だったものの、今回は7件のリクエストが寄せられました。テレワークの普及に伴い、時間内に仕事を終えられない、優先順位がつけられないなど、タスク管理に課題を感じる新入社員が一定数いることが明らかになっています。これらの声を踏まえ、実務に直結するスキルや働き方をサポートする研修がさらに重要になると考えられます。
Q.OJT担当者との関係性は良好ですか?(多肢択一式)
OJT担当者とは良好な関係
アンケート結果によると、91%以上の新入社員がOJT担当者との関係を「良好」と感じています。良好以上を選んだ理由としては、次のような声が挙がりました。
・OJT担当者が丁寧にフォローや面倒を見てくれるだけでなく、雑談を交えて接してくれるのが助かる
・疑問を遠慮なく質問できる(在宅時は通話やチャットを活用)。業務以外のプライベートな話もでき、飲みに行くこともある
・フィードバックが具体的かつ建設的で、改善点だけでなく良い点も指摘してもらえるため成長を実感できる
・質問をまとめて伝えた際も丁寧に答えてもらえ、日誌にも親切なコメントをいただけるのが嬉しい
これらの回答から、OJT担当者が積極的にコミュニケーションを取る姿勢が、新入社員との良好な関係構築につながっていることがわかります。
一方で、「少し問題あり」以下を選んだ新入社員や、「良好」を選びつつも課題を感じている声には、以下のようなものがありました。
・OJT担当者が多忙で、指示が雑になることがある
・自分から積極的にコミュニケーションを取れず、相談や質問がしづらい関係になっている
これらの結果から、OJTの効果を最大化するための改善点が見えてきます。なかには「OJT担当者とは業務が終わったら飲みに行ったりすると思っていたが、まったくないので残念です」と言った意見もありました。“若手は会社の飲み会が嫌い”とステレオタイプに決めるのではなく、これも個人次第ということですね。
Q.実際に現場で働いてみて、採用時にイメージした仕事とのギャップを感じますか? (多肢択一式)
採用時にイメージしていた仕事より良かった
93%以上の新入社員が実際に働いてみて、採用時に持っていた仕事のイメージが良かったり、イメージ通りだったりすると感じています。
これらのポジティブなフィードバックは、新入社員が職場環境や業務内容に対して高い満足度を感じていることを示しています。
最後に ――――
フルコロナ世代の新人育成、そして生成AIの本格活用
2024年に入社した新入社員は“フルコロナ世代”と呼ばれ、大学入学時に新型コロナによる緊急事態宣言を経験し、その後3年にわたり影響を受けた世代が中心です。オンライン授業が中心で友人が作りにくい、やりたかったアルバイトや留学機会の喪失など、本来得られるはずだった経験が制限された世代です。一般的にはデジタル技術に対する適応力が高く、一方で対面コミュニケーションやチームでの協働経験が不足していると言われていました。
たしかに研修当初はこちらから機会を設けないとコミュニケーションが活性化しなかったり、チームでの議論に遠慮がちで安易な成果に留まったりというシーンが見られました。しかし、時間の経過とともに新入社員同士の距離が縮まり、チーム内の議論も活性化。失われたこの数年間を取り戻しているかのように研修を楽しむ姿が印象的でした。
そして生成AIの本格活用(利用NGの企業あり)が始まったのも、今回の新入社員研修でした。開発プロジェクト演習では、設計書の仕様をプロンプトとして生成AIに渡し、ソースコードのベースを作り、それを検証しながら修正していく、このようなシーンが各所で見られました。
このような時代の変化や技術の進化がある背景をもとに、今回の配属後調査を見返してみるとまた違った面が見えてくるかもしれません。この記事を作成している現在、各社の育成担当者様と2025年度の新入社員研修の内容検討を進めている真っ只中です。各社の配属後調査結果を分析しながら、次の新入社員にとって、より効果的なカリキュラムや進め方、施策になるよう目指しています。
最後に、今回の調査にご協力いただいた新入社員の皆様、そして育成を担当された方々へ、心からの感謝を申し上げます。